令和4年1月13日
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2022年度税制改正大綱 その2
新年を迎えました。本年も引き続きよろしくお願い致します。前回は税制改正大綱の中から住宅関係の改正点をお伝えしました。今回は、金融所得課税の考え方について簡単にお伝えします。
①金融所得課税とは?
金融所得課税とは、株式や配当金などの金融商品に関する所得に課される税金のことで、現在の税率は一律20%(所得税15%、住民税5% ※復興所得税を除く)となっています。これは、他の所得とは切り離して課税されるため「分離課税」と呼ばれています。
②金融商品の保有実態は?
日本証券協会が行った調査によると、世帯年収400~500万円では、金融商品の保有額の平均は508万円であるのに対して、世帯年収2,000万円以上では、1831万円となっています。年収500万円以上から金融商品の保有率が高くなる傾向があり、株式の保有率は年収400~500万円が10.9%であるのに対して、年収2,000万円以上では43.4%となっています。
③1億円の壁とは?
岸田首相が就任直後の記者会見で、「1億円の壁を念頭に、金融所得課税について考えていく必要がある」と述べました。「1億円の壁」とは所得がこのラインを超えると、総所得に対しての負担税率が低下するという意味合いで使われます。なぜ、このような事象が起こるのでしょうか。原因は先の①、②で述べた、分離課税と金融商品の保有実態にあります。
金融商品を運用し、どれだけ運用益(金融所得)を出したとしても分離課税であるため、一律20%の税率しかかかりません。さらに、余剰資金の多い高所得者ほど金融商品の保有額が多くなるため、総所得のうち金融所得が占める割合も上昇します。結果、おおよそ1億円超の所得層から負担税率が下がり始めるという事象につながるという訳です。これを解消するため、金融所得課税の見直し(増税)が提言されています。
④今後の動向は?
2022年度税制改正大綱では、「金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある」との文言があったのみで、具体的な改正案は盛り込まれませんでした。
岸田内閣発足直後、投資家が金融所得課税の改正を警戒したことで、一時的な株価の暴落が発生しました。そういった背景もあり、改正が見送られたと考えられます。老後2,000万円の資産形成のため、積極的な金融商品への投資を促している側面からしても、非常に難しい問題だと思います。
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